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通勤手当ではなく、社宅貸与すべき理由

会計士のkatsuki(katsuki_jp)です。

通勤手当が支給される会社がほとんどだと思いますが、本当に必要ですか?
通勤手当を支給しているがゆえに満員電車を助長させています。

他の会社が支給しているから支給してる?残念ながら思考停止です。

通勤手当の支給は必ずしも良いとは言えません。

通勤手当のデメリットと代替案を提案します。

通勤手当のデメリット

通勤手当にはいくつかのデメリットがあります。

通勤手当は社会保険料計算の対象

通勤手当は非課税と思っている方も多いのではないでしょうか。

これには落とし穴があります。

たしかに通勤手当は月額15万円まで給与所得には入りません。
しかし、社会保険料の課税対象となります。

これは、従業員1人に通勤手当を月1万円支給しているとすると、1万円×社会保険料負担額15%=1,500円が会社、社員それぞれの社会保険料を負担することになります。
※社会保険料負担率はおおむね会社、社員それぞれ15%程度のため15%を使用しています。

つまり、会社と従業員の合計で毎月3,000円の負担が生じてしまいます。
これは年間(12ヶ月)で36,000円、従業員が1,000人と仮定すると3,600万円の負担となります。

すごい金額ですね。

通勤手当は遠方からの出勤を助長する

通勤手当を支給すると、家賃の安い地域に住むことを助長します。

ミクロ(企業)の視点からみると、社員が遠方に住むことで通勤にかかる負担が増し、疲労が溜まり仕事の効率が下がることが懸念されます。
また、満員電車では身動きも取れず生産的な時間ではありません。

マクロ(日本全体)の視点から見ると、満員電車を助長することとなり、ストレス社会を加速させ何も良いことがありません。

通勤手当の不公平

例えば会社から片道徒歩10分のところに住んでいて通勤手当を受給していない、家賃10万円のAさんがいたとしましょう。
この場合、会社負担は0円、Aさんの支出は10万円となります。

次に会社から遠く会社まで片道1時間かかり通勤手当1万5千円を受給している、家賃8.5万円のBさんがいたとしましょう。
この場合、社会保険料を含めると会社負担は1.7万円、Bさんの支出は8.7万円となります。

Aさんの方が会社と個人の負担合計が少なく、さらには往復の通勤時間が20分と電車で命削る必要もないため全体最適となっています。

それにも関わらず、個人負担が10万円と多いこととなります。

Bさんの場合、会社と個人の負担合計が社会保険料分多く、さらには往復の通勤時間が2時間と長くなります。

一方で、個人負担が8.7万円と少なくなります

個人レベルでみるとBさんが得するため、Aさんの方が全体最適であるにも関わらず個人負担が多くなるという不公平が生じます。

社宅貸与のメリット

通勤手当のデメリットを解消するために社宅の貸与を提案します。

前提として、社宅とは居住用の住宅を個人契約するのではなく、会社が契約した賃貸物件を従業員に貸与する場合を言います。

社宅貸与の際に一定額(詳細は下記で説明)の家賃以上を受け取っていれば所得税は課税されず、また、社会保険料の課税対象にもなりません。

したがって、通勤費と比較すると社会保険料分が得することとなります。

それでは、社宅貸与に係る所得税と社会保険料の取扱いについて詳細を見ていきましょう。

社宅貸与の所得税の取扱い

所得税の場合、賃貸料相当額(下記参照)が課税の判定に使用されます。
賃貸料相当額は下記により算定されます。
<賃貸料相当額の算定式>
(1) (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
(2) 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))
(3) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

下記の例で計算してみると賃貸料相当額は53,109円となります。
例:建物課税標準額1,000万円、土地課税標準額1,500万円、30㎡とした場合、
(1)20,000円
(2)109円
(2)33,000円
合計 53,109円
なお、マンションの場合の賃貸料相当額の計算は、上記計算式に基づいて計算した値から床面積等に応じ按分されることとなります。

賃貸料相当額53,109円を前提条件として、社宅貸与の所得税の取扱いを3つのパターンに分けて見てみましょう。

パターン別の条件

パターン1:社宅の無償貸与
パターン2:社宅の有償貸与(賃貸料相当額の50%未満)
パターン3:社宅の有償貸与(賃貸料相当額の50%以上)

<パターン1>
無償貸与の場合は、賃貸料相当額53,109円が給与として課税されます。
<パターン2>
賃貸料相当額53,109円と有償額(会社が受取る家賃額)との差額が給与として課税されます。
<パターン3>
賃貸料相当額53,109円の50%以上、つまり26,555円以上の家賃を会社が従業員から受取ることで給与として課税されません。
例えば、30,000円受取っている場合でも賃貸料相当額53,109円との差額23,109円は課税されません。

したがって、社宅貸与をする場合は<パターン3>に該当するように家賃を従業員から受取るようにしましょう。

基本的に賃料相当額は家賃よりかなり安く計算されます。

社宅貸与の社会保険料の取扱い

<社会保険料の取扱い(労働保険料を除く)>
都道府県によって異なりますが、平成30年4月以降の東京都では、1畳(※)あたり2,590円が現物給与とされます。

例えば洋室が6畳の場合、15,540円が現物給与となります。

ただし、従業員の負担額は差し引かれるため、15,540円以上の家賃を会社が従業員から受取るがことで現物給与はゼロとなり、社会保険料の課税対象とはなりません。

※1畳の計算は和室、居間、洋室であり、玄関、台所、トイレ、廊下等は含まれません。

<労働保険料の取扱い>
社宅貸与は労働保険料の課税対象とはなりませんが、社宅の貸与を受けていない従業員に対して不公平を無くすために手当(均衡給与)を支給している場合は労働保険料が課税されます。

なお、基本的に所得税の基準の方が厳しいことから、所得税の基準により非課税とされる場合は社会保険料(労働保険料含む)も非課税となります。

社宅貸与と通勤手当の比較

通勤手当のデメリットで述べたA氏とB氏を元に、追加条件としてA氏に社宅貸与した場合とB氏を比較検証してみましょう。

<前提条件おさらい>
A氏:会社から片道徒歩10分、通勤手当無し、家賃10万円
B氏:会社から片道1時間、通勤手当1万5千円、家賃8.5万円

<追加条件>
A氏の住居を社宅とし会社が1.5万円を負担

詳細は下記の通りとなります。

※従業員が家賃の85%も負担しているため、給与及び社会保険料が課税される可能性はほとんどありません。

これでB氏に通勤手当を支給するよりも、住宅手当で1.5万円支給する方が会社、従業員ともにお得で、さらには、会社の近くに住居を構えることで無駄なストレスや疲労、非生産的な時間から解放されます。

最後に

この記事を呼んだ皆さんは、一律に通勤手当を支給すべきなんてバカな考えはありませんよね?
すでにマンション、一戸建てを購入している場合など、様々な状況が考えられるため一律に通勤手当を支給せずに社宅貸与すべきという話ではありません。

ただ、社宅貸与の方が圧倒的に得なことは間違いありません。
むしろ、通勤手当を支給している会社は満員電車を促進させ、ストレス社会を形成する会社とも言えるでしょう。

この記事が通勤手当を見直すきっかけとなれば幸いです。

なお、役員に対する社宅の貸与については従業員とは若干要件が異なるため、別途ブログにしたいと思います。

わからないことがあればTwitterのDMでも結構ですのでご連絡ください。

では

通勤手当反対連盟会長(架空)
katsuki(katsuki_jp)