会計士のkatsuki(katsuki_jp)です。
最近、「富裕層は株の譲渡所得と配当所得が多く、税負担が軽い!」などとTwitterを賑わせていますが、
(´-`).。oO(本当にそうなのか???)
と疑問を抱いたためブログに考えを纏めてみました。
富裕層は税負担が軽いというが、私の結論から言うと、富裕層の税負担が軽いのは形式的には正解だけど、実質的には大間違いというものです。
簡潔に説明すると、所得税負担のみを見ると税負担は低くなるが、株主は会社の所有者であり実質的に法人税を負担しているため、税負担はそこそこに高いというものです。
富裕層は所得税が軽いという根拠
富裕層は所得税が軽いという方々の根拠はこちら。
縦軸が所得税率、横軸が所得金額です。
確かに富裕層は株式の譲渡所得や配当所得が多く、これらは税率が20%程度のため所得税の負担率は低くなっています。
しかし、所得税しか考慮されていないことに注意が必要です。
株主が実質的に負担している税金は所得税だけではありません。
前提条件
詳細な解説に入る前に、会社の所有者は株主という前提を理解しておいてください。
会社の所有者は株主と言うと違和感を覚える方もいるかもしれません。
細かな点は省略しますが、株式会社は所有(株主)と経営(役員)が分離されています。
もちろん、役員が株主を兼務していることは往々にしてありますが、会社の利益が還元されるのは株主であり、会社は株主が所有しています。
この前提を元に税金の負担について解説したいと思います。
みんなが見落としている税金
富裕層は税負担が軽いと思っている方は所得税のみで語っているのは上記の図で明らかで、確かに株式の譲渡、配当を見れば分離課税で20%程度(厳密にはさらに復興特別所得税がかかる)です。
※某有名ファッション通販サイトの社長は発行済上場株式を3%以上保有しているため、配当は総合課税(最高55%)となります。
ここで、先程の前提を思い出してください。株主は会社の所有者です。
ということは、本来の会社の稼ぎである税引前純利益(会社の儲け)の金額が株主が享受すべき利益となるはずです。
しかし、会社には法人税等(地方税含む)という会社の所得に対して課税される税金があります。
そのため、税引前当期純利益(会社の儲け)から法人税等の税金を負担し、その後残存した利益(当期純利益)が株主が享受できる利益となります。
そう、実質的には株主が法人税等を負担しているのと同義なのです。
そして、法人税を差し引かれた当期純利益を原資として株主に配当されます。
個人のみで見れば、配当所得による所得税20%負担ですが、法人税を支払っているのは会社の所有者である株主であり、法人税と所得税の二重課税となっているのです。
ここで、下記の会社を例に見てみましょう。
簡略的に法人税率35%、配当の税率20%、当期純利益は全額配当としています。

株主は本来享受できる利益5000から法人税等1750、所得税650の合計2400を負担し、差引き2600しか残らないこととなります。
したがって、税負担は48%となります。
これでも富裕層は税負担が軽いと言えるでしょうか?
年収(給与)500万円の方の所得税及び住民税の負担率が10%にも満たないことを鑑みると、税負担48%は相当高いものであることがわかると思います。
なお、説明のために便宜的に配当所得をメインに説明していますが、株の譲渡所得についても株主である時点で法人税を負担していることに何ら変わりはありません。
所得税という側面のみを見て、富裕層の負担が軽いなどと批判するのは非常に暴力的な話です。
木を見て森を見ずとは正にこのこと。
確かにサラリーマンは所得税(及び住民税)しか払っていません。
でも会社の所有者である株主は実質的に法人税等を負担しているのです。
終わりに
富裕層は税負担が軽いという方々は理解した上で言っているのか甚だ疑問です。
富裕層は税負担が軽いというような記事は大手メディアを始め各所に掲載されていますが、私は上記の通り全くの誤解であると考えています。
もし仮に法人税を負担した後の利益に分離課税の20%ではなく、所得税(住民税含む)の最高税率55%が課税されるとなると、株主の所得(税引前当期純利益)に対する税金(法人税、所得税及び住民税)の負担割合は7割にも上ることとなってしまいます。
7割負担とは異常とも言えるほど高い税率です。
私は富裕層でもなんでもないですが、富裕層を妬むのではなく、富裕層に仲間入りしたい!富裕層になって社会に大きな価値を生み出したい!!という人が増えることを願うばかりです。
仮に富裕層の税負担が軽いとした場合でも、自分も富裕層側になってやろう!!と努力すれば良いのではないかと思います。
この世は不平等です。私自身も短い人生経験ながら感じました。
不平等を前提にするならば、人の足を引っ張るのではなく自身が優位に立てるように努力をしたいものです。
では。
katsuki(katsuki_jp)